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日刊留萌新聞   2003年(平成15年)1月1日     

留萌青年会議所    達人会 留萌商工会議所青年部 留萌の水を語る会
富田直樹さん    高橋雄輔さん    澤井篤司 佐藤太紀さん
新春座談会  留萌南部圏の広域行政と地域振興

 地方自治体を再編成する市町村合併は、今年の大きな課題だ。留萌南部圏三市町の合併
の道筋は、まだはっきりしていないが、合併協議会の設置に向けて、ステップを踏み出す年に
なりそうだ。
 市町村合併と今後の地域振興の展望などを、マチづくりに取り組むグル−プの人たちに話し
合ってもらった。

テ−マは
「三市町合併」、「財政難」、「住民感情」、「産業振興」、「食品加工」、「地域の個性」、「観光」

三市町合併
−合併の論議が本格化してきました。地域の将来を考える上で、合併の論議は避
 けて通れません。皆さんは南部市町の合併をどう考えますか。−
(澤井) 合併は、市町村が抱える問題に対する万能薬ではないし、合併によって
 全ての問題が解決するわけではないと思います。にもかかわらず、合併自体が
 目的になっているのは危険な流れだと思います。
  交付税や特例債といった刺激的なエサが示されています。特例法は期限があ
 りますから検討しなければならないのは当然ですが、大事なことは地域の自活
 とか、南部圏の将来ビジョンを目的とした本来の議論を並行して進めなければな
 らない、ということです。合併は地域の自活を実現するための最終手段ではない
 でしょうか。根底には地方分権があり、その受け皿となる市町村に力を与えるた
 めに合併問題が出てきた−と認識していますが、財政的な支援策というカンフル
 剤を出してきて、強制的に合併させようという雰囲気の中で、本質論の部分を見
 失わないようにしなければなりません。
  そもそも合併は、お互いの便益がなければならないわけで、その意味ではより
 広域的な合併が望ましいわけです。そういうところに踏み込んで議論したいです
 ね。
財政難
−国も地方も財政悪化の中で、現状の行政体制で対応できるかどうか、疑問符が
 付きます。合併の最大のポイントは、やはり財政問題ということになりますか。−
(澤井) 私は財政問題を解決する手段として合併を選択するのは、先ほども言い
 ましたように、危険ではないかと思います。確かに十年間は合併前の交付税が
 維持されますから、メリットと言えます。しかし、その後五年間で段階的に削減さ
 れ結果的に合併前の総額が三割カットされる、というシナリオです。
 つまりアメの部分だけに目を向けた合併というのは、長くて十五年間の延命策に
 過ぎないわけです。それ以降は再び財政難がふりかかるかもしれないわけで、
 安易に乗っかるのは賛成できません。先ほども申しました様に、限りある特別交
 付税を将来への発展性のある投資として使わず、システム改善なく使い切ってし
 まった場合、自活はおろか深沼に急速に転落するするという危惧を拭えません。
  合併の意義は広域連携を追求した結果、近隣市町村の便益が共有されるとい
 う利点が大きく、結果として地方分権の受け皿となる市町村の行財政基盤が強
 化できる、という確信のもとに達成されるものでなければならないでしょう。
  財政的な特例はよりよい都市を作り上げていく戦略として使うべきで、当面の財
 政赤字を埋めることを目的とするのは本末転倒です。
住民感情
−行政経費削減のより有効で究極の形を求めるのが合併だと思いますが、住民
 にはマチへの愛着があります。最終的に住民の意思で決定するとすれば、そう
 いう住民感情の部分をどう調整するか、が論議を前に進めていく上で重要なこと
 ではないでしょうか。−
(澤井) まず住民が今、置かれている自治体の現況を把握する必要があります。
 合併で何がどう変わるのか、住民が検証できるデ−タ−が必要です。
 根拠に乏しい議論は感情論争につながる危険性がありますので、デ−タ−開示
 をきちんとやるところから出発しなければなりません。そこを間違えると、合併どこ
 ろではなくて、感情論の対立になると思います。私は住民同士が率直に話し合う
 べきと思いますし、合併協議会の設置も住民発議のほうが良いと思います。
  それと、本当に行政コスト削減の道はないのか、という点も考えてみる必要があ
 ります。削減が不可能とすれば、合併の手段を選ばざるを得ないわけですが、行
 政経費削減のポイントは施設の運営も含めて人件費にあると思います。人件費の
 総額とは、「一人当たりの賃金×人数×能力」です。能力を評価し、効率化を図る
 前に、人数減らしで調整するのは無理があります。
  過疎地域なのに人減らしの選択がベストか、ということも考えなければなりませ
 ん。有能な人材を育てるということと、採用を抑制して若い人を入れず自然減をす
 るということは、相反する方針です。視点をちょっと変える必要があるのではない
 でしょうか。
産業振興
−新産業創出、企業誘致は簡単ではないし、公共事業に期待できる時代ではなく
 なりつつあります。農業を中心とした一次産業と関連の二次産業に目を向けるの
 はどうでしょう。−
(澤井) 北海道は農水産物の供給基地になっています。ですから、一次産業を抜
 きに地域振興は論じられないのは当然です。ただ、他地域と競合する物を生産し
 ても競争に精力を使います。新たな産品とか、健康志向に合致した有機無農薬
 栽培などによって、付加価値の高い産物を生産しなければならないと思います。
  今、高橋さんが言われたように留萌の地域環境を考えると、海を生かす産業振
 興も重要だろうと思います。港湾・流通ともマッチするような方策を考えるのが現
 実的ではないかと思います。
  一次産業のほか工業製品なども集約し、港を核にした地域づくりを目指したほ
 うが、特化した地域振興策が生み出せるのではないかと思います。
 雪を活用したロ−コストの保管技術なども大いに活用したいですね。
食品加工
−留萌地域は水産加工が主要産業の一つで、食品加工分野の蓄積があります。
 そうした地域の資産を生かして、農産加工品についても産業おこしができるので
 はないでしょうか。−
(澤井) あえて言えば、産業とはいかなくても留萌地域のPR媒体として、特徴あ
 る商品を開発するという視点で考えたらいいのではないかと思います。
地域の個性
−次に個性のある地域づくりについて伺いたいと思います。個性とか独自性は地
 域振興の武器と言われますが、ポイントを絞る必要があると思います。
 個性というのは自然、歴史、文化、産業、人、地域の立地条件など、いろいろあ
 るわけですが、全てにおいて個性的地域づくりは無理でしょう。どういった部分で
 個性を磨くのがいいでしょうか。
(澤井) 留萌市については、港と物流という地域性そのものを強く打ち出すことに
 よって、独自性が生まれると思います。埋もれている素材が多すぎような気がし
 ます。例えば、市内に公園は四十数カ所ありますが、都市計画規準を満たして
 いるのは半分以下です。作られたときにそれなりの目的があったと思いますが、
 埋もれている物を放置して新しい物を作ることにはなりません。現状の素材をき
 ちんとした物に作り上げることを、まず考えたいですね。
観  光
−もうひとつの可能性として観光はどうでしょう。地域振興のテ−マとしては言い古
 された観がありますが、観光振興の方向と、その手だてについて意見はありませ
 んか。−
(澤井) 最近、エコツ−リズムやグリ−ンツ−リズムといった言葉が使われていま
 すが、これはまさに体験型・滞在型観光です。留萌の観光振興のキ−ポイントだと
 思います。観光というのは人を呼び込むことですから、まず住民がマチに魅力を感
 じなければなりません。
  先ほども言いましたが、公園は数があるだけで閑散としており、冬は雪に埋もれ
 ています。新たに物を作るよりも、今ある素材をオ−ルシ−ズンで活かすことを考
 えたいですね。住民が魅力を感じるところを作っていくことが、観光振興の出発点
 だと思います。